槍ヶ岳 飛騨沢2770m
2011/04/24(ワシ、ハッシー)

試練の飛騨沢、真冬の春スキー日帰り
いまいちの天気予報で新潟方面の予定していた山もキャンセルとなり、少しでも晴れるかと期待をいだきつつ新穂高へ。夜中から雨があがってきたので本日もビッグデイか。ただところどころ急な雨とか言ってるのが気になるし、急遽決めたため準備不足はいなめない。以前にやっているとはいえ、こういうビッグ山行には数日前からよくよく研究熟考してモチベーションを高く保つことが必須だったりする

4:20新穂高ゲート発。しばらくはスキーを担いでサンダル歩き。小鍋谷を渡ってから雪道となり4:35シール歩き。林道の雪は断続しており7、8回はスキーを外す
 
5:20穂高平からは完全に雪が着いている
 
5:42柳谷より。抜戸岳、笠ヶ岳が素晴らしい
 
6:03白出沢出合。1時間半以上かかった。当然だが、道には雪がない方が速いものだ
 
雪が豊富だから左岸に降りて直線的に行こうと、薄いトレースがあったので早めに降りてしまったらドツボ。ちょうど沢のくねるところで雪がなく、岩をへつって行こうとしたらドボン!靴下も濡れるし余計な時間をくってしまい一気にテンションダウン
 
6:40気を取り直して左岸をそのまますすむ。7:17やがてチビ谷の大きなデブリが目の前に。沢全体を埋め尽くす
 
 
チビのくせにどこからこんな雪を吐き出してくるんだか。標高数メートルにもおよびスキーを担いで乗り越すのに一苦労
 
その先、中くらいと小さいデブリを2つ越えてやや登ると
 
ようやく滝谷7:56 すでに3時間半を経過。むーん、今日は厳しいぞ
 
しかし一日晴れてくれればなんとかなるか
 
日が出る前に通過したかった滝谷先のデブリランド。ここは突っ切る以外にないが、まだ寒く雪が硬くても不気味。それだけでなく昨日の雨でアイスに固まった上にうっすら新雪が積もったため全然シールの効きが悪く、遅遅として進まずホント神経に悪い
 
それでも一日晴れてくれればいいか・・・と、あれれ?雲がでてきたじゃね
 
デブリ歩きはクトーも生かせず大苦登
 
なんとか危険地帯を突破。緩斜面のガチガチバーンだがこの天気なら帰りは緩んでくれるんだろうねえ
 
9:04槍平小屋付近通過。4時間半もかかった。時間がかかってる=体力消耗著、だからしてこれは今日の登頂はかなり困難と思い始める
 
飛騨沢にさしかかるころ雲のスクリーンが覆いはじめ
 
遠目にもはっきりとわかるメインバーンに大デブリ。デブリはいつものことなのだろうが、テンションがた落ち
 
 
デブリは2500m付近から突如始まっている。今日は新雪が積もっており不気味。上部に2名ツボ足で登っていくのが見えた。下にはその足跡はなかったのに、どこから来たのか?しかもクマのごとく速く、あっという間に稜線に消えていった。槍平から登ってきたにしてもなんとゆう体力か。湯けむり飛騨沢吹雪に消える謎のクライマー!
 
10:51 ここまで急登でやや緩斜面になった2520mにて休憩。上部の視界悪化で肉体的精神的疲労がひどい。新雪もそこそこあってクトーも不要で、むしろ登りやすいくらい。気温は低いが風も強くなく、登って登れなくない状況ではあるけれど気持ちが上に向かない
 
ときおりガスが晴れ稜線らしいのが見える。しかし実はまだまだうんと遠い。ここから滑ろうと一度声にだしたが、そういえば今日アイゼン履いてなかった
 
アイゼンを新調したので次回の山行のためにアイゼンをためしたかったのだ。ではもうワンピッチ登ってみよう。11:10発。さっきのパーティがつけたトレースへ沿って登るが、全然消えてしまっていて完全にラッセルとなる。これならシールの方が全然楽だが、もうその選択はない
 
12:12吹雪、完全にホワイトアウトの2770m。真冬だ。風も強まり、何も見えないと雪崩もおっかない。足首程度の新雪モナカラッセルでも足はもう限界。これ以上行ってもアイゼン下降だ。ハイクアップ、ギブアップ(写真は上を見上げたところ)
 
さて冷静に考えると、ここからでも無事降りられるかどうかわからない。一瞬の晴れ間に写真のように下が見えたが斜面の表情までは見えない。12:25滑降開始するも道標の旗を見失わないよう超ショートターンと斜滑降メイン。アイスバーンかモナカかデブリか足探りで滑る
 
スキーするには兎にも角にも視界。モナカに足をとられ1回転倒しちゃったワシ
 
確かに2500mくらいからやや滑りやすくなり、デブリが通った跡はモナカも一掃されて意外に好バーンだった。2400m付近で飛騨沢中心を逸れて左手の尾根。この辺のみやっと普通にスキー可能だった
 
基本はアイスバーンだが
 
槍平までガチガチで、疲れた足に追い打ち
 
槍平で休憩しメシを喰らい、どんよりと曇り空の冷たい空気のもと、大変気が重い下山路へ。滝谷まではアイスバーンのまま、途中から急なデブリ斜面で勘弁してほしい限り。だが難関と思われた滝谷からのデブリ3カ所はやや雪もゆるみ、デブリ末端を巻くようにスキーで楽勝に通過。ツボ足じゃかえって危ないね。今回はデブリ滑りに慣れました。14:04チビ谷
 

14:41トレース通り左岸から夏道へと登り返すが、中途半端に硬い雪でツボ足が雪に埋まって大変。最後にきてしんどい
 
白出沢では深々と雪が降ってきた。春感ゼロ。その後は林道滑走、足がぱんぱんになったが無事帰ってこられた。15:43スキー終了。新穂高へ10分
    
全行程が試練だった。絶対に無理せずをモットーに登山すると決めたのだったが、今から考えるとそこで下山するなら判断が遅かったかもだった。しかし本当に行くつもりならもっと早く出発すれば晴れているうちに登頂もできたはず。今回はやはり敗退であろう。ただただ無事で何より、ホッとしているところだが次回に生かそう。さて悪天時はとくにハイクアップ終了からスキー滑降まで準備はできるだけ短時間で終わらせること。かなり無防備な時間だ。Dynafitの場合、スキーとブーツのビンディング回りの氷結に注意。よくよく考えると春は厳冬期よりもリスクが大きいと思う。雪崩、滑落、クラック、ときには動物。天候急変も多い(冬はもともと悪いからね)。装備は厳冬期と同じだったが、一度陽気な頭になると冬の寒さの前に気持ちが委縮してしまう。この時期寒気が入るような時には慣れてない高山へは行かないぞと思った。ちなみに謎のクライマーは槍ヶ岳山荘のスタッフ。ちょうど旗を立てにきてたのだと。ありがとうございました。おかげで下山も安心でした。こうやって事件も無事解決をみたが、結局この日の純粋な登山者はワシらのみだったか
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